2022年度の活動を振り返って
岸田政権が発足して1年半以上が過ぎました。私たちはいったいどこに連れて行かれるのでしょう。「丁寧に説明していくことが大事」と耳にタコができるほど聞かされたのに、何ひとつ具体的・合理的な説明がなされたことはなく、気がつけば戦後日本の防衛政策大転換である安全保障3文書の改訂が閣議決定され、電力不足や電気料金上昇を口実に、原発の新規建設や60年を超す運転を可とし「原発を最大限利用する」政策転換が打ち出されました。
一方で、「多様性を認め合う包摂的な社会を目指す」政府方針を掲げてはいるものの、首相と思想や施政方針を最も共有する秘書官が性的少数者や同性婚をめぐって差別的発言をする、「LGBTは生産性がない」などさまざまな問題発言を繰り返している杉田水脈氏を総務政務官に任命して「適材適所」とかばい続けるなど、首相自身の人間性が疑われます。首相に人を見る目があれば臨時国会の会期中に3人もの閣僚が問題を起こし更迭される事態など起こらなかったでしょう。
人々の生活への共感が見えないと言えば、この1年余りのコロナ政策にも表れています。重症化する例が減少したとはいえ、第7波の7~9月には1日の死亡者が300人を超える状況、第8波の年末から1月にかけては高齢者施設でクラスターが続いて1日500人近い死亡者が出ていました。1月下旬に、春にはコロナを2類から5類に変更との報道が流れると「今様の楢山節考5類かな」の川柳が新聞に掲載されました。経済を回す必要性は理解できるものの、政権には「世間でのコロナ対策が緩くなればなるほど、私たちは一層対策をしなくてはならない」「健康被害に直面する高齢者のことが隅に追いやられてしまわないか」との特養職員の声への想像力などないのでしょう。
7月8日、安倍元首相が奈良市での参議院選候補者の応援演説中に銃弾に倒れ、9月27日には、閣議で決めてしまった国葬が行われました。当初は安倍氏を悼む声が多かったものの、事件の背景に安倍氏と旧統一教会との深いつながりや旧統一教会の反社会活動が知られるようになると国葬に反対する声が大きく広がりました。事件をきっかけに山上容疑者と同様、多額の献金による家庭崩壊や虐待を受けてきた宗教二世の当事者たちが声を上げ、霊感商法等による被害の救済法ができましたが、根本的な解決には程遠いものです。被害者救済に取り組む弁護団が要求する旧統一教会への解散命令も見通しがたたず、何より安倍元首相だけでなく衆院議長、国家公安委員長など多くの自民党議員と旧統一教会の深いつながりについては何一つ解明されていません。政策が特定の宗教団体の影響を受けているとしたら大問題です。決して岸田首相の言う「未来に向けて関係を断つ」で済ませていい問題ではありません。おかしいことはおかしいと何度でも声を上げ追及していく必要があります。3月末に亡くなった音楽家、坂本龍一さんの言葉「政治や社会を考えることは立場に関係ない。生きていればみなすること。それは日本でも当たり前にすべきだ。」を実践し、拡げていきましょう。
1.
組織拡大・充実、組織体制の整備を目指す取り組み
2022年度は217名の新会員を迎え、6月18日には3年ぶりとなる定期総会を開催することができました。当日は運動方針案を補強する複数の意見が出され、活発な議論が行われた後、運動方針を確定しました。2021年度から女性が参加しやすい組織運営に取り組む努力をしてきましたが、今年度の役員改選で新たな女性役員が加わりました。今後も女性の声が反映される運営を目指します。
財政については、神高教からの支援金と会員のみなさまからの「高校生平和大使カンパ」「日退教連帯カンパ」や「シニア運動の運営カンパ」、神高教指示に基づく行動への参加補助などを活動費に充てています。今年度は約41万円ものカンパをお寄せいただきました。心から感謝申し上げます。
2.
憲法改悪反対、岸田自公政権の退陣など神高教・上部団体の活動方針を踏まえた諸活動への取組み
(1) ロシアのウクライナへの軍事侵攻から1年となる2月24日に合わせて、国連総会緊急特別
会合が開かれ、「ロシア軍の即時撤退を求める決議案」が加盟国の約7割にあたる141ヵ国の賛成で採択されました。今の国連にできる精一杯の決議と言えますが、一方で反対や棄権など、ロシアに配慮を示した国が50ヵ国に上り、国際社会の分断が浮き彫りになりました。また、岸田首相は3月21日にウクライナを訪問、殺傷能力のない装備品3千万ドル(40億円)分を供与する考えを明らかにしました。ウクライナへの支援強化は必要であるものの、武器輸出を制限する『防衛装備移転三原則』をなし崩しにすべきではありません。平和国家としての外交努力を尽くすべきです。シニア運動は総がかり行動実行委員会が呼びかける「ロシアは侵略をやめろ、ウクライナからの撤退を!4.8日比谷集会」、「ロシアのウクライナ侵攻から1年ウクライナに平和を!2.24日比谷集会」に多くの会員が参加しました。
(2)7月月の参議院選挙で与党は改選議席の過半数を確保しました。改憲に前向きな自民・公明・
日本維新の会・国民民主の4党の獲得議席は改憲発議に必要な参議院全体の3分の2を上回りました。衆議院では3月以降毎週憲法審査会が開かれて緊急事態条項が必要との声が上がるなど憲法「改悪」の危機はこれまでになく高まっています。改憲阻止に向けた諸活動に全力で取り組まなければなりません。シニア運動は神高教とともに、総がかり行動実行委員会が呼びかける毎月の19日行動に多くの会員が参加しました。また「2022憲法を考える5・3憲法集会(5/1)」、「改憲発議許さない!守ろう平和といのちとくらし2022憲法大集会(5/3)」、「第18回憲法集会(5/20)」、「2022憲法を考える11.3県民集会」、「11・3憲法大行動」に参加しました。
(3) 12月16日、岸田政権は安保関連3文書(国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計
画)を閣議決定し、安保環境が戦後最も厳しいとして、相手の領域内を直接攻撃できる「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」として明記しました。また、2023年度から5年間の防衛費を現行の1.5倍以上となる43兆円とするとしています。日本国憲法に基づく専守防衛に徹した戦後の防衛政策を大きく転換するものです。国会ではないどこかで議論され、国会ではないどこかで決定された文書がいきなり歩き出すなど異様なことだと認識する必要があります。どれだけの防衛費がなぜ必要なのかを検討し積み上げた形跡もありません。「戦争できる国づくり」に反対する運動を強化する必要があります。「第五次厚木基地爆音訴訟勝利!防衛予算増大を許さない8.27神奈川集会」、「原子力空母ロナルド・レーガン横須賀配備抗議!母港撤回を求める10.1集会」、「軍事費増やして生活壊すな!改憲反対!カルト癒着の政治をただせ!11・30in日比谷野音」に参加しました。
(4) 2022、年7月ミャンマー軍政当局が民主化運動の活動家4人の死刑を執行したとの報道に衝撃が走りました。ミャンマーで死刑が執行されたのは1990年以来です。2021年2月のクーデター後の弾圧で2100人以上が死亡、100人以上が死刑判決を受けていると言います。日本政府は軍政を利する人道目的以外の援助事業(ODA)を停止すべきです。シニア運動は会員が中心となって活動している日本・ミャンマーカルチャーセンターの生活困窮者への支援を呼びかけています。
(5) コロナ下での自粛生活から少しずつ経済活動が再開されてきましたが、電気・ガス・ガソリ
ン、多くの飲食料品の価格が上がり私たちの生活を圧迫しています。また、コロナ後遺症やワクチン接種後の体調不良に苦しむ人々への救済は全く進んでいません。貧困対策、一人親対策、非正規労働者失業対策など格差拡大を許さない対応を求めていく必要があります。
(6) 7月実施の参議院選挙では、日教組組織内候補の古賀ちかげさんが144,000票を超える得票
で初当選を果たし、選挙区では水野もとこさんが当選しました。全体では立憲が6議席を減らす中、自公はほぼ横ばい、日本維新の会が6議席を増やす結果となりました。自公、維新、国民の議席が参議院の3分の2を上回る厳しい状況となりましたが、権力の私物化、隠蔽体質を許さない取り組みの手を緩めるわけにはいきません。
(7) 野党議員が放送法の政治的公平性をめぐる解釈などについて、安倍政権下での官邸側と総務
省側のやりとりの内容を示す内部文書を公表し、2015年に当時の高市総務相がこれまでの「番組全体を見て判断する」から「放送番組が政治的に公平かどうか、ひとつの番組だけを見て判断する場合がある」との新たな解釈を加える答弁をした内幕が明らかになりました。官邸側は強硬かつ執拗に解釈を変えようとし、「政府が番組の内容を判断する」と平然と口にしていることに愕然とします。放送各社は影響を受けたと認めてはいませんが、視聴者から見れば各テレビ局の委縮は何段階も進んでしまっていることは明らかです。露骨な政治介入について関係者への徹底的な調査が必要です。
(8) 9月の沖縄知事選挙で、玉城デニー知事が圧勝しました。2014年の翁長県政以来3連勝で
「辺野古に新たな米軍基地はいらない」の民意が三度示されました。土砂投入から4年近くたちますが投入された土砂は必要総量の12%、深さ90mに及ぶ軟弱地盤の埋め立ては不可能と言われま
す。米議会調査局が「物理的に困難」との報告書を公表するなど米国内でも辺野古新基地建設を疑問視する声が上がっています。政府は沖縄の民意を尊重すべきです。シニア運動は神高教とともに、オール沖縄会議が呼びかける「辺野古新基地建設の断念を求める請願署名」に取り組みました。また、「復帰50年辺野古新基地建設を許さず憲法が生きる沖縄と日本を!in東京(5/26)」、「チムグクルで考えようデニー知事トークキャラバンin横浜(7/13)」、「1・27「建白書」10年日比谷野音集会」に参加しました。
(9) 岸田政権は12月、ウクライナ危機に伴う燃料高騰や電力不足、脱炭素への対応を強調して
再稼働の推進だけでなく、原発の新規建設や60年を超す運転期間延長に踏み込んだ基本方針をまとめました。たった4ヶ月の検討で、福島の事故以来堅持してきた政府方針を大転換することになります。2月28日には、エネルギー関連の5つの法案(原子力基本法、電気事業法、原子炉等規制法、再処理法、再生可能エネルギー特別措置法)を「束ね法案」として閣議決定し国会に提出しました。重大事故が起きれば取り返しのつかない原発に頼り続けるのであれば国民的な議論が必要なはずです。電力危機に乗じた原発回帰を許してはなりません。「さようなら原発首都圏集会 (4/16)」、「改憲発議と大軍拡やめろ!さようなら戦争さようなら原発9・19大集会(9/19)」、「さようなら原発全国集会(3/21)」に参加しました。
(10)神高教・日退教・平和フォーラム・神奈川平和運動センターとともに核兵器廃絶に向けて取り組みました。「ストッププルトニウム神奈川連絡会総会&講演会(2/27)」に参加しました。また、
シニア運動は全国各地で集めた「核兵器廃絶と平和な世界の実現を求めた」高校生一万人署名を国連欧州本部に届ける高校生平和大使派遣を応援しています。
3.
シニア・再任用者などの生活・高校教育を守る取り組み
(1) 再任用者、非常勤職員など定年後の教職員が生活できる賃金の保障、労働条件の改善、安心
して働ける環境整備に神高教とともに取り組んできました。2023年度から定年が2年に一度1歳ず
つ引き上げられ、2031年度に65歳となります。定年引上げと連動して再任用給与水準の改善に取
り組む必要があります。また、シニア運動では、毎年「再任用者と雇用(失業)保険」についての資
料を配付し、再任用を終了した時は忘れずに失業給付を申請するように呼びかけていました。今年
度は、神高教が初めて開催した「再任用終了予定者説明会(2/11)」に協力し、シニア運動役員が65
歳で再任用を終了する方を対象に失業給付の申請方法について解説しました。
(2)2022年10月から一定の所得がある75歳以上の医療費窓口負担が2割に引き上げられまし
たが、それに続き厚労省の審議会は介護保険制度の見直しに入っています。厚労省は主な検討課題
を6つ(介護サービスの利用料原則2割・3割負担の対象拡大、要介護1・2の保険給付を外して
市町村の事業に、ケアプランの有料化、老健施設の多床室の室料全額自己負担、介護保険料の支払
い年齢引き下げ、高所得の65歳以上の保険料引き上げ)を挙げていますが、いずれも負担増と給付
削減を狙う「史上最悪」の見直しと言えます。介護保険サービス利用者の9割は75歳以上で、医
療費の窓口負担増とのダブルパンチとなり高齢者の生活に大きな影響を及ぼします。改悪を許さな
い取り組みが必要です。3年ぶりの開催となった9・14全国高齢者集会、9・15地公三単産・地公退
高齢者集会に参加し、五者合同学習会(10/13)では介護保険制度の現状について理解を深めました。
(3)神高教と連携して、主権者教育・平和教育・人権尊重を推進する活動に取り組みました。神
奈川朝鮮学園を支援する会の総会・映画上映会(6/8)に参加するとともに、神奈川朝鮮中高級学校の耐震・校舎内修復のための募金を呼びかけました。
(4)コロナ対策については、引き続き検査体制、治療体制の整備・拡充を求めます。コロナ後遺症
やワクチン接種後の体調不良について実態を調査し、対策を講じるべきです。
(5)定期総会が隔年開催となったため、6月9日に日退教組織代表者会議が開催され、2022年度
の活動方針を確認しました。また、日退教組織活動交流集会(10/14)に参加しました。日退教東北
岩手学習・交流の旅(10/30~31)、沖縄と連帯する日退教第11次沖縄交流団(3/21~22)にはそれ
ぞれシニア会員3名が参加して現地退教との交流を深めました。日退教連帯カンパには、会員から
のカンパ10万円を寄付しました。
県内の退職者労働組合で組織されている神奈川シニア連合第31回定期総会(11/30)に参加して
県内労働組合の退職者組織との交流を図ってきました。神奈川シニア連合が呼びかけた生活困窮者
に食料品等を届ける活動をしている「フードバンクかながわ」でのボランティア活動に参加し、寄
贈された食料品の検品・仕分け作業を行いました。
4.若者・子ども支援の取り組み
若者支援については、神高教が中心になり、2014年に立ち上げた「生徒・若者支援センター」に
シニア運動も団体会員となり、様々な困難を抱えている生徒・若者に対して手厚い支援ができる環
境づくりを目指して積極的に関わってきました。「高校生平和大使」派遣運動への協力の取り組みについてはカンパを中心に取り組み、10万円を寄付しました。2022年8月、高校生平和大使派遣25周年にあたり、シニア運動は活動の発展に寄与したとして高校生平和大使派遣委員会より感謝状を贈呈されました。
5.地方自治、市民活動を担う取り組み
地方自治、市民運動を担う取り組みについては、労働相談ネットワーク運動に参加してきました。神奈川労働相談ネットワークは神高教、国労、自治労などの県内労組と労災職業病センター、神奈川ユニオン協議会などで構成されています。「県民のいのちとくらしを守る共同委員会(略称:いのくら)」の活動にも積極的に参加してきました。津久井やまゆり園での凄惨な事件を風化させないため、「『やまゆり』からいのちを問い続ける第6回横浜フォーラム」が10月29日に開催されました。シニア運動は神高教とともにこのフォーラムの実行委員会に参加しています。
6.「シニア運動」活動交流を進める取り組み
(1)「教育研究所公開研究会(7/30)」、「教育研究所教育討論会(11/19)」、「神高教第65次教育研
究集会(12/3)」、「トブロツアー2023in南武(2/18)などの神高教の運動に参加し、現役世代との
交流を深めました。
(2)ホームページには平和・人権・民主主義を守る様々な行動の案内、再任用・非常勤職員の権
利についての情報、年金・雇用保険の情報などを掲載してきました。積極的な利用を推進するため
に「掲示板」コーナーも開設しています。また、3年ぶりの開催となったシニア交流会(1/21)では
現職の退職予定者を交え、会員のシニアライフ紹介や参加者の近況報告が和やかに行われ、交流会
開催の意義を再認識しました。3月31日に開催された神高教退職記念パーティーには、シニア役員
5名が参加しました。
(3)研究会や同好会については、現在ゴルフ同好会と写真同好会が活動しており、ゴルフ大会の
開催、神奈川県内各地での写真撮影会などを行って交流を深めています。新しい会の設立が期待されます。
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