神高教シニア運動第16回定期総会宣言に代えて
2年に及ぶ新型コロナ禍の中で、私達は昨年に引き続き定期総会を開催することが出来ませんでした。会員の皆様には、経過報告、運動方針、予算決算、予算案を送付した書面にてご検討いただくという変則的な形となってしまったことは残念でした。
会員の方々から運動方針等への修正・補強意見をいただきました。また、多くの方々から近況報告や、励ましをいただきました。役員一同感謝申し上げます。
新型コロナ禍は一向に収まらず、第5波の感染拡大の中で、7月12日東京(4度目)と沖縄に緊急事態宣言を発出し、8月には多くの県に拡大せざるを得ないほど感染が拡大しています。IOCと日本政府・東京都は、開催都市がそんな状況の中でも、1年延期した東京オリンピック・パラリンピックの開催を強行しました。競技場は無観客としましたが、このような主催者の姿勢は、国民の命や安全よりも、地に落ちた菅政権の浮揚と五輪利権を優先させたと言わざるを得ません。
東京五輪の開催費用は、当初7300億円余とされていましたが、現在では開催費用が約3兆円以上にも膨れ上がっています。この巨大な利権が開催強行につながったのでしょう。そもそも、東京五輪は招致の段階から、賄賂で開催を勝ち取ったもので、復興五輪とか、原発事故は「アンダーコントロール」にあるとか、「日本の夏は温暖な気候」など、賄賂と嘘で塗り固められた「五輪」と言わざるをえません。
安倍前首相は、昨年8月末に総理大臣として歴代最長を記録すると、持病の悪化を口実に政権を投げ出しました。これも、政権の守護神と言われた黒川検事長の検事総長への就任工作に失敗したからとも言われています。このように、安倍政権は、「モリ・カケ・桜問題」など安倍総理の身内びいきの腐敗構造の「膿」がたまりにたまった結果として政権を投げ出したのです。そして、財務省は、安倍夫妻を守るために公文書改竄を強要され、自殺に追い込まれた赤木俊夫さんの「赤木ファイル」を出し渋り、半年後に裁判所の命令によって提出したものの、死者に鞭打つような対応をしています。
安倍政権を継いだ菅総理が最初にやったことは、日本学術会議の6名の会員の任命拒否でした。この暴挙は、戦前の滝川事件を彷彿とさせる学問の自由への侵害行為です。そして、学術会議からの抗議にも、拒否理由の開示要求にもまったく応えようとしていません。6名の任命拒否を進言したのは、公安畑出身の杉田官房副長官であることが明らかにされています。まさに公安支配内閣と言うことが出来ます。
安倍内閣による検察支配の思惑は失敗しましたが、検察自体の問題は残っています。検察は、黒川検事長の麻雀賭博を不起訴としました。この不当な対応に対し、シニア運動の仲間を含む市民団体が、東京地検に起訴するよう告発し、検察は再度不起訴としましたが、検察審査会が黒川氏を「起訴相当」とした結果、略式起訴とせざるを得ませんでした。
自公政府の身内びいきの政治は止むことを知りません。菅首相の長男が勤める東北新社による、電波行政を担う総務省幹部への過剰接待問題が起こりました。この問題は、自民党内閣による属人的政治支配が露わになったものです。さらに、総務省幹部による認可企業であるNTTからの過剰接待も明らかになりました。これら接待を歴代の総務大臣も受けていた事まで明らかになっています。これらも市民団体によって、東京地検に贈収賄事件として告発されています。
改憲に前のめりだった安倍前首相同様、菅首相も改憲を積極的に進めようとしています。菅首相は憲法記念日の改憲派の集会にビデオメッセージを送り、改憲への強い意欲を示した上で、国民投票法改正案を強行成立させました。このことは、内閣総理大臣の憲法遵守義務を定めた憲法99条に違反する行為で看過できません。
自民党は、日本がアメリカとともに戦争が出来るように、九条に自衛隊の存在を明記する、緊急事態条項を新設する、ことに的を絞って改憲論議を進めようとしています。特に問題なのは、新型コロナパンデミックを利用して緊急事態条項を新設しようとしていることです。自民党幹部の下村博文氏、元衆議院議長の伊吹文明氏らは、新型コロナの感染拡大が起こる前の2020年1月に「新型コロナ感染症は、緊急事態条項新設の議論の進展と改正の実験台となる」との発言をしており、現在でもそのような発言を繰り返しています。
台湾を巡って米中の対立が激化する中、バイデン大統領が就任後最初に会う首脳として大喜びでアメリカへ出かけていった菅首相は、共同声明に「台湾海峡の重要性」を入れました。さらに、G7でも台湾海峡問題を共同声明に含められたのです。この状況で麻生副総理は、「台湾有事は日本の存立危機事態であり、集団的自衛権行使の対象となりうる」と踏み込んだ発言を行い、さらに2021防衛白書に「台湾の安定は我が国の安全保障にとって重要」と記載したことで、中国からの強い反発を招いています。また、菅首相は、8月15日の国の戦没者慰霊祭で「積極的平和主義」を表明しました。
沖縄本島を中心とする南西諸島の軍事基地強化は、この東アジアの危機的状況をさらに煽っています。その中心に辺野古新基地建設があることは言うまでもありません。沖縄県民の意思を無視しての無謀な埋め立てや、南部戦跡の遺骨の混じる土砂を使って埋め立てを強行しようとする日本政府の姿勢の背景には、現実の「戦争準備」があります。私達は、この自公政府の戦争政策にストップをかけなければなりません。
ミャンマー軍部は、クーデタによってアウン・サン・スー・チー氏と大統領を逮捕し、国民への暴力的支配を強めています。これまで、日本政府と日本企業は軍部と密接な関係を持っていました。政府は、ミャンマーに民主主義を取り戻すために日本が果たしうる役割を考えるべきです。
アメリカが9・11同時多発テロを口実に侵攻したアフガンからの撤退を決めたことで、アフガンはタリバンが再び支配しました。アメリカは、この侵攻で200兆円を費やし、日本も約8000億円を支援してきました。しかし、これらの支援の多くが腐敗した政権幹部の懐に入ったとも言われています。本当の支援は、故中村哲氏のような、非軍事、民生のための支援であり、氏が日本の国会で「自衛隊の派遣は有害無益」と述べると、自民党議員はヤジを飛ばし馬鹿にしたのでした。今回のアメリカの撤退とタリバンの支配樹立は、中村氏の行為が正しかったことを示しています。
コロナ禍と五輪狂想曲で、国民の目、メディアの目が逸らされている中、国民の人権を制限し不利益を与える悪法が、十分な審議もなく強行成立されました。デジタル庁設置関連法、重要土地利用規制法、少年法改正、後期高齢者の医療費自己負担倍増などです。
デジタル関連法は、個人情報をマイナンバーと紐付けることを可能とし、個人の預貯金や、思想信条やプライバシーなどが行政に把握される可能性があります。これをコロナ禍でのスムーズな給付金の支給や、ワクチン接種などを口実に成立させたのです。
重要土地利用規制法は、軍事施設や国境地域での周囲1㎞地域の個人の土地を利用規制したり、監視することを可能とする法律ですが、重要施設に何が含まれるかは国の裁量権にかかっていて、戦前の軍機保護法を彷彿とさせるものです。しかも、「軍事」施設と言っても、大きな基地ばかりでなく、様々な施設が存在します。その周辺の土地の個人の財産権を制約する法律は、戦争準備のための法律と言わざるを得ません。
少年法改正は、18,19歳の少年を特定少年として少年法の保護から外して厳罰化を進めるもので、少年法が少年の立ち直りを図るために制定されているのに対し、その機会を奪うものです。そもそも近年、少年事件は極めて減少し、再犯率も低くなっています。
後期高齢者の医療費負担2割への引き上げの強行も、「世代間負担の公平性」をその目的としていますが、実際には若い世代の保険料負担はほとんど減りません。このように立法事実がない、もしくは立法の必要性をごまかして、国民に不利益を与える法律を、コロナ禍と五輪報道に隠れて成立させてしまったのです。
重要法案で唯一成立しなかったのは入管法改正案です。この法案は、不法滞在者とされた者が、三回難民申請が却下されると強制送還するというもので、日本では認められるのは極めて少数であることから、多くの難民申請者、支援者から批判が高まっていました。このような中で、名古屋入管施設に収容されていたスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが、入管職員の非人道的対応により死亡する事件が起こりました。そのため、日本の入管法への批判が高まり、法案を取り下げざるを得なかったのです。しかし、その後のウィシュマさんの死の真相究明への法務省の対応には、内外の批判が高まっています。
教育面では、小学校の35人学級が実現しました。また、文科省は、教員の免許更新制度の「発展的解消」を決定しました。そもそも、永久免許として付与された各種教員免許が、現職教員まで更新制度を導入したこと自体、免許制度の根幹を揺るがすものです。教員の免許更新制は、自民党政権による教育の支配統制の強化のため以外の何物でもありません。しかし、この制度のために、退職者や教職に就いていない者が更新しなかったり、更新ミスなどにより失職する者さえ多数出ています。この更新制によって、現場での教員不足や教員志望者の減少などの事態を生じさせています。直ちに教員免許更新制度を廃止することは当然のことです。
「アンダーコントロール」にあるはずの福島第1原発は、事故の収束の目処はまったく立っていません。トリチウムや放射性物質を含む冷却汚染水は原発敷地内のタンクに貯められていますが、政府はこの汚染水の海洋放出を決定しました。これに対し、漁民などからの強い反対の声や、諸外国からの批判が高まっています。
また、菅内閣はCO2削減の主要な方策として、原子力発電所の新増設、再稼働を決めています。そして、40年を超える老朽原発の再稼働を認める判決も出されています。自民党は60年を超えての稼働さえも言い出しています。しかし、CO2を放出しないと言われる原発は、巨大な施設設備や燃料製造、遠距離送電など総合的エネルギー収支では、決して脱炭素発電では無いし、地震の多発地帯である日本では原発は極めて危険な施設と言わざるを得ません。日本原電は、敦賀原発2号炉直下の活断層のボーリング資料さえも書き換えています。何としても、原発ゼロに向けた運動の強化が急務です。
菅内閣は、新型コロナ対策では繰り返される緊急事態宣言だけで、有効な対策を取ることが出来ずにいます。首都圏では、コロナ病床の逼迫によって、入院も出来ず自宅待機(放置)状態で死亡する例が後を絶ちません。コロナ禍の1年半での医療対策は、「無策」という言葉でしか表せません。政府の蔓延防止対策も、外出自粛と飲食店への営業自粛要請のみで、それによって大打撃を受けている地方経済や、観光、飲食業への支援や非正規労働者への救済対策は不十分です。コロナ禍での経済の低迷は、貧富の格差を拡大し、平均賃金の低下、失業者の増加によって非正規労働者の自殺が増加しています。しかし、政府は一律給付金は二度とやる気は無いと言い放ち、困窮した国民の救済は念頭にありません。
自民政権の腐敗が噴出しています。河井夫妻の買収事件では、河井克行元法務大臣に有罪判決が出されましたが、1億5000万円の自民党本部からの特別提供は一切明らかにされていません。また、100人に及ぶ被買収者を、全員不起訴にするという法治国家とは思えない対応をしています。
菅原一秀元経産大臣の買収事件もまた、検察は不起訴としましたが、検察審査会で起訴相当とされ、略式起訴とせざるを得ませんでした。吉川元農林大臣の贈収賄事件は、在宅起訴され辞任せざるを得ませんでした。また、公明党は、貸金業法違反事件で2名の現職議員の議員事務所が家宅捜索を受けるなど、腐敗では負けていません。このように、安倍・菅、自・公内閣の9年間、「汚物まみれの政治」が行われてきたのです。その間日本経済は、大企業や政権の周辺いる特定の者だけが利益を受ける一方、一般国民は低賃金に喘ぎ、庶民の生活は消費税増税など一層苦しめられています。この間、主要先進国の中で賃金が低下しているのは日本だけです。
このような無策続きの自公政権への支持率は低下を続け、補欠選挙での4連敗、地方選挙での自民系候補の低迷・落選が続き、都議会議員選挙では自民党は実質的敗北を喫しました。そんな中での起死回生策が、五輪の強行と新型コロナワクチンでした。しかし、国民の側を向いていないこれらの政策は、ちぐはぐさばかりが目立ち、菅首相が全面的に支援した地元の横浜市長選では、野党統一系候補者が大差で勝利しました。
新型コロナワクチンは、希望する65歳以上の高齢者に7月中に接種を完了するという菅首相の「公約」は果たされませんでした。ワクチンは、緊急承認という形で接種されていますが、ファイザー、モデルナ社製のワクチンは2023年5月までが治験期間です。副反応の心配や、次々と出現する変異種には十分に対応できないとも言われ、ほぼワクチン接種が完了しているイギリスやイスラエルでの感染再拡大も起こっています。このような中での東京五輪の強行は、感染拡大をもたらしただけでした。さらにパラリンピックも強行し、児童・生徒の学校観戦も実施するとしています。問題は、コロナでの死亡率の極めて低い若年層へのワクチン接種や、希望しない者への強制です。ワクチンパスポートも始まりましたが、接種の強制とならないよう監視が必要です。
このように、9年間にわたる自・公政権の中で、経済の低迷、政治の腐敗がすすみ、社会に嘘とごまかしが蔓延して、権力を握るもの、その周囲にいる者たちだけが利益を得るような社会となってしまいました。また、メディア支配が進み、真実を伝える情報が少なくなっています。このような社会を変えるためには、今年10月末までに行われる衆議院選挙において、野党統一候補の擁立と、その勝利に向けた努力が求められています。前述したように、東アジアにおける戦争の危機も高まっています。私達が長年誓ってきた「教え子を再び戦場に送らない」ためにも、神高教シニア運動に結集する私達が、平和を守り、政治の革新を進め、民主主義を守り抜くために先頭に立って闘おうではありませんか。
2021年8月第16回定期総会宣言に代えて
神奈川県高等学校教職員組合シニア運動役員一同
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