2019年度の活動を振り返って
歴代最長となった安倍政権は民主主義の基盤を掘り崩し続け、事態はますます深刻さを増しています。財務省による森友学園の決裁文書改竄をはじめ、2019年1月に毎月勤労統計不正・偽装調査など政府統計の不正処理が相次いで発覚したにもかかわらず真相はなにも解明されないままうやむやのままです。10月に辞任した菅原一秀前経産相も、河井克行前法相も、ともに何も語らないまま現在に至っています。安倍首相は「任命責任は私にある」と言えば責任をとったことになると考えているようです。未曽有の公文書改竄でも麻生氏が続投し、選挙区で秘書が線香を配って批判された茂木敏充前経済再生相は外相に起用され、大臣室で現金を受けとった甘利明氏は自民党税制調査会長に就いています。なんと有権者がみくびられていることでしょう。
安倍政権の国会軽視も深刻です。野党が4月に予算委員会の開催を要求したものの、国会規則を無視して10月の臨時国会まで約200日以上も開かれませんでした。また、野党が要求した参考人招致はほとんど無視され続けています。国会軽視の極め付きが自衛隊の中東派遣です。憲法違反の可能性がある自衛隊派遣を、国会審議をまったくせず、年末に閣議決定だけで決めてしまいました。
11月に野党議員が追及した「桜を見る会」の疑惑は大問題に発展しました。参加範囲は「功労・功績者」のはずなのに参加者数が増え、支出額が予算の3倍、5500万円にもなっている問題は、追及を通して首相自身が招待関与を認め、2019年の招待者の5割以上が官邸幹部と自民党による推薦であること、招待者の中に取引停止命令を受けたマルチ商法業者が含まれていたことがわかっています。しかし、この件に関する官僚の答弁は「お答えできる資料を持ち合わせておりません」「個人情報なのでお答えできません」「名簿は遅滞なく廃棄しました」の繰り返しで、まるで政権に貢献する従者となり、官僚が社会に貢献する公僕としての矜持など失ってしまったようです。
7月に行なわれた参院選の全体の投票率が48.8%、18・19歳の投票率は前回より15.45ポイント下がって31.33%というのも大変気になります。私たち有権者が「責任の放棄」「国会軽視」「官僚の変質」という政治の現状を放置し続ければ、民主主義はどこまでも壊されてしまいます。
安倍政権を終わらせ、立憲主義を取り戻すために、若い人たちとも力を合わせて、あきらめず、
ねばり強い運動を展開していきましょう。
1. 組織拡大・充実、組織体制の整備を目指す取り組み
2019年度には235名の新会員を迎えました。会報を年3回発行し、総会の出欠はがき・メール等に寄せられた会員の声を会報に「会員の今」として掲載したり、「シニアライフ」コーナーなどで会員の様々な活動を紹介してきました。財政については、神高教からの支援金や会員のみなさまからの「高校生平和大使カンパ」「日退教連帯カンパ」や「シニア運動の運営カンパ」、神高教指示に基づく行動への参加補助などを活動費に充てています。厳しい状況ではありますが、これまで2月に発送していた会報を4月に総会案内と合わせて発送することで発送費用1回分を倹約したり、総会出欠確認にメール返信フォームやFAXを利用できるようにし、返信はがきには切手を貼付していただくなどの工夫をしてきました。総会等で窮状をお伝えしたところ、今年度は昨年を大きく上回る38万8千円のカンパをお寄せいただきました。心から感謝申し上げます。今後も工夫をしながら、会員のみなさまをつなぐ活動を継続していきたいと思います。
2. 神高教・上部団体の活動方針を踏まえた諸活動への取り組み
(1)7月21日に投開票が行われた参院選で、立憲野党は改憲派を3分の2割れに追い込みました。10月4日に開会した臨時国会の所信表明演説で、安倍首相は憲法9条への自衛隊明記など、改憲に向けた議論を呼びかけましたが、閣僚の連続辞任、「桜を見る会」の私物化問題が噴出するなどして、衆院憲法審査会が開催されたものの国民投票法改正案の採決は断念され、安倍首相の総裁任期中の改憲は困難な状況になりました。シニア運動は神高教とともに県内各駅頭で行われた「改憲させない県内駅頭宣伝行動」に参加して署名活動に取り組み、「9条改憲NO!平和といのちと人権を!5.3憲法集会2019」、「2019憲法を考える5.3県民集会」、「建国記念の日と憲法を考える集会-日本と韓国の今-(2/11)」に参加しました。引き続き憲法改悪阻止に向けた取り組み、世論に訴える取り組みが必要です。
また、「映画『アイたちの学校』上映会(12/4)」、「不戦の誓い学習会『日韓関係の戦後課題』(12/5)」に参加して日韓関係についての理解を深めました。
(2)12月27日、安倍政権は臨時閣議を開き、防衛省設置法に基づく「調査・研究」目的で海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」とP3C哨戒機2機、要員260人の中東派遣を決定しました。「不測の事態」が生じた場合は、武器使用も可能となる「海上警備行動を発令する」としていて、隊員がいつ武力紛争に巻き込まれてもおかしくない状況であり、情報を米軍や有志連合と共有することで、自衛隊が攻撃目標とされるおそれさえあります。「自衛隊を中東に送るな!閣議決定反対!緊急行動(12/27)」、「海自・護衛艦たかなみの中東派遣、即時停止を求める緊急横須賀行動(2/1・2/2)」、に参加しました。
2020年度当初予算案では、防衛費は5兆3133億円と6年連続で過去最高を更新しました。これまでの陸・海・空の枠組み以外の宇宙やサイバーなど新しい領域での対応能力を高めるほか、米国製ステルス戦闘機F35B購入に793億円、航空自衛隊のF2戦闘機の後継機開発のための111億円などが計上され、「専守防衛」を逸脱する軍事力整備が進められています。安倍政権が進めてきた戦争ができる国へと歩を進める諸法令の廃止に向けた運動、防衛予算の大幅増額に反対する運動を強化する必要があります。
(3)12月14日で辺野古沿岸部への土砂投入が強行されて1年となりました。「普天間飛行場代替施設建設事業に係る技術検討委員会」の第1回会合で、政府は新基地の供用期間を50年と設定していることを明らかにしました。複数の委員が軟弱地盤のため、建設費2兆6500億円(沖縄県試算)にとどまらず、完成後も50年間地盤沈下に伴う補修などで莫大な支出が避けられないと指摘しています。基地建設に反対する沖縄市民への不当な弾圧に反対し、辺野古新基地をつくらせない闘いを支援し、沖縄とともに取り組みましょう。「示そう辺野古NO!の民意を!全国総行動5・25国会包囲行動」「安倍改憲発議阻止!辺野古新基地建設やめろ!東北アジアに平和と友好を!11・3憲法集会」に参加しました。
11月2日にロナルド・レーガンが入港し、横須賀基地への原子力艦寄港は、1966年の原子力潜水艦スヌーク寄港から通算1000回に達しました。神高教・日教組・平和フォーラムとともにオスプレイ配備撤回、日米地位協定の抜本的改定、基地撤去などに向けて「原子力空母ロナルド・レーガン横須賀配備抗議!母港撤回を求める10・1全国集会」に参加しました。
(4)関西・四国・九州電力は、テロ対策施設の完成が期限に間に合わないことを明らかにしました。九州電力は川内原発1・2号機を2020年3月に運転停止すると表明、関電高浜原発3・4号機も2020年夏以降運転停止することになっています。関電幹部の金品受領問題などにより、再稼働に不可欠な地元同意を得ることが困難であり、現在停止中の1・2号機を含め全4基が運転停止となる公算が高まっています。国連は、2020年度までに石炭火力発電の新規建設を中止するよう各国に呼びかけており、22基の大型火力発電所の建設(計画)が進行中で途上国への輸出も継続している日本は世界から批判を浴びました。2030年の電源構成比が石炭火力26%、原発20~22%と、石炭と原子力に拘り続けるエネルギー計画に縛られる日本はますます世界から遠ざかっています。「さようなら原発全国集会(9・16)」、「ストッププルトニウム神奈川連絡会総会・講演会(1・21)」に大勢のシニア運動会員が参加しました。
(5)再任用者、非常勤職員など定年後の教職員が生活できる賃金の保障、労働条件の改善、安心して働ける環境整備に神高教とともに取り組んできました。課題であった臨任の療養休暇が2020年4月から常勤と同様90日有給(これまでは10日のうち5日有給)と大幅に改善されました。また、2020年4月からは会計年度任用職員制度がスタートすることに伴って、特別職として任用されている非常勤講師が一般職に移行します。引き続き「会計年度任用職員」の制度運用について検証し待遇改善となるような取り組みが必要です。
通常国会に国家公務員の定年を60歳から65歳に段階的に引き上げる関連法改正案が提案され、2022年度から実施の見通しとなっています。60歳後の給与水準は7割程度となっています。定年引上げと連動して、再任用給与水準の改善に取り組む必要があります。シニア運動では、「再任用者と雇用(失業)保険」についての資料を配付し、再任用を退職した時は忘れずに失業給付を申請するよう呼びかけました。
(6)年金・医療・介護などの諸課題解決に向けて様々な場で取り組んできました。「9.16地公三単産・地公退高齢者集会」、「9.17全国高齢者集会」などに積極的に参加して、高齢期の暮らしを心豊かで生き甲斐あるものにするため、年金・介護・医療制度などの改善をめざして運動を進めることの重要性を確認することができました。また、シニア運動交流会では「国民健康保険」をテーマに、逆進性の強い保険料の仕組みについて理解を深めました。
(7)10月に消費税が10%に引き上げられ、経済が落ち込んだ上に新型コロナ感染防止のため、外出やイベントなどの自粛要請が出され、飲食・観光・宿泊・運輸など多くの中小事業者に深刻な影響が出ています。また、文化・芸術分野でも公演中止などにより、関係する多くのフリーランスが無収入になっています。本来、自粛と補償はセットであるべきですが、首相は「税金による補填は難しい」としています。損失補填、直接支援がなければ経済危機は乗り越えられません。
(8)新型コロナウイルス感染拡大で、安倍首相は科学的根拠も示さずに全国の学校の一斉休校を要請し、ほとんどの教育委員会がそれに従いました。子どものため仕事を休まざるを得ない保護者への対応が問題になりましたが、子どもの学習権が奪われることについての論点はほとんどありませんでした。権力による教育への介入を許さない取り組みを掲げる私たちの意識も試されています。今後、一斉休校要請や教育委員会の対応について検証する必要があります。
神奈川の教育の諸課題の解決に向けての取り組みについては、「第62次教育研究集会(11/30)」、「高校教育会館2019討論集会(11/16)」に参加して現役世代との交流を深めました。「教科書について考える市民の集い(6/1)」、「教科書市民フォーラム講演会(11/16)」などに参加しました。
(9)日退教の第48回定期総会が6月7日に開催されました。竹田邦明さんが会長に選出され、運動方針を確立しました。また、日退教関東地区組織活動交流集会(9/27)、日退教組織活動交流集会(10/11)に参加して交流を深めました。日退教三・一独立運動100 周年記念ソウルへの旅(10/7~9)に4名、沖縄と連帯する日退教第10次沖縄交流団(11/6~7)には3名が参加、日退教第4回福島学習の旅(11/17~18)に1名が参加しました。日退教が呼びかけた「日退教連帯カンパ」には会員からのカンパ8万円を寄付し、台風15号・19号被災会員支援カンパに1万円を寄付しました。
県内の退職者労働組合で組織されている神奈川シニア連合第28回定期総会(11/22)に参加して、県内労働組合の退職者組織との交流を図ってきました。神奈川シニア連合施設見学会(6/13 羽田クロノゲート)に参加しました。
(10)「桜を見る会」での税金私物化など、安倍政権のモラルハザードが次々明らかになっています。森友問題では、決算文書の改竄を強要された末、命を絶った財務省近畿財務局職員の妻が手記を公開し、真相を知りたいと佐川元理財局長と国を提訴しました。国会での追及に安倍首相も麻生財務相も再調査の必要はないと強弁しています。しかも、あろうことか中立たるべき検察首脳人事に介入し、法解釈や国会答弁を強引に変える無理を重ねてこの国の法治を踏みにじっています。安倍政権の独裁的・権力私物化はまさに国家の底が抜ける状態と言えます。でたらめな政権運営を許してはなりません。主権者として声をあげ、度重なる公文書の改竄・廃棄、政権によるマスメディアのコントロールを許さない取り組みを一層強めましょう。安倍政権退陣!を求めて総がかり行動が呼びかける「毎月19日の国会議員会館前行動」に毎回大勢のシニア運動会員が参加し、ねばり強く取り組みました。何としても安倍政権を退陣させましょう。
3.若者・子ども支援の取り組み
若者支援については、神高教が中心になり、2014年に立ち上げた「生徒・若者支援センター」に
シニア運動も団体会員となり、様々な困難を抱えている生徒・若者に対して手厚い支援ができる環
境づくりを目指して積極的に関わってきました。6月8日に開催されたかながわ生徒・若者支援セ
ンター総会・「カフェ・サミット2019」に参加しました。
「高校生平和大使」派遣運動への協力の取り組みについてはカンパを中心に取り組み、8万円を寄付しました。また、シニア運動会員がかかわっている福島の子どもたちを神奈川での保養に招く活動をしている3つの団体(福島こども・こらっせ神奈川、福島の子どもたちとともに川崎市民の会、福島の子どもたちとともに・西湘の会)に5万円ずつ寄付をしました。
4. 地方自治、市民運動を担う取り組み
地方自治、市民運動を担う取り組みについては、労働相談ネットワーク運動に参加してきました。神奈川労働相談ネットワークは神高教、国労、自治労などの県内労組と労災職業病センター、神奈川ユニオン協議会などで構成されています。また、県内の教育支援や各種ボランティア組織を会報・ホームページなどで紹介し、「県民のいのちとくらしを守る共同委員会(略称:いのくら)」の活動にも積極的に参加してきました。津久井やまゆり園で19人もの重度障害者の命が奪われた凄惨な事件を風化させないため、「『やまゆり』からいのちを問い続ける第3回横浜フォーラム」が8月31日に開催されました。シニア運動は神高教とともにこのフォーラムの実行委員会に参加しています。
5.「シニア運動」活動交流を進める取り組み
(1)「かながわ中央メーデー」、「神奈川地域労働運動交流メーデー」さらに「神高教教研集会」などの神高教の運動に可能なところから積極的に参加し、現役世代との交流を深めてきました。
(2)ホームページには平和・人権・民主主義を守る様々な行動の案内、再任用・非常勤職員の権利についての情報、年金・雇用保険の情報などを掲載してきました。積極的な利用を推進するために「掲示板」コーナーも開設しています。また、現職者を交えての交流会(11/16)は11回目になり、現役を含む26名の参加者で退職後の様々な生活などについて情報交換するなど、会員の交流を図りました。さらに、神高教退職予定者説明会(1/18)に役員が手伝いで参加し、税務説明会(2/15)でも、確定申告書き方の説明の補助をしました。退職2年目以降のシニア運動会員にも参加を呼びかけ、再任用を辞めたので改めて説明を聞きたいという会員の参加も含め、60名の参加がありました。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、3月31日に予定されていた神高教退職者パーティーは中止となりました。
(3)研究会・同好会については、現在ゴルフ同好会と写真同好会が活動しており、ゴルフ大会の開催、神奈川県内各地での写真撮影会などを行って交流を深めています。今後の発展と新しい会の設立が期待されます。
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